チャプター 355

ピアノのコンサートが幕を閉じると、テヒラは舞台裏で休息を取りながら、携帯電話を取り出してネイサンに電話をかけた。

一方、国立競技場では、ギャスパーの手に握られた携帯電話が鳴り響いた。画面には登録のない番号が表示されている。

彼が電話に出ると、甘く心地よい声が聞こえてきた。「ネイサン、今どこにいるの? ピアノのコンサートが終わったところなの。今夜、一緒にディナーでもいかが?」

ギャスパーは氷のように冷たい声で答えた。「ネイサン様は今夜、クレモン夫人とご自宅で夕食をとられます。あなたにかまけている時間などありません。失せろ」

プツッ。

彼は一方的に電話を切った。

テヒラは呆然として携帯...

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