チャプター 361

彼女から少し離れたところに、シャツ姿で佇むウィリアムがいた。休憩中なのだろう、ラフな格好だ。フォーマルなスーツを身に纏っていなくとも、その鋭さはまるで鞘に収められた剣のようであり、隠しきれない気品と威厳が漂っていた。

ウィリアムは予期せぬ彼女との遭遇に、驚きつつも相好を崩した。目を引くような赤いドレスを纏っていたコンテストの日とは違い、今の彼女はゆったりとした袖の白いトップスにジーンズ、キャンバス地のスニーカーという出で立ちだ。繊細な顔立ちには薄化粧が施され、全体的に清潔感があり、とても爽やかな印象を与えている。

その姿を目にした瞬間、彼の心臓がトクリと跳ねた。

イベントの際、ヒルダは遠...

ログインして続きを読む