第552章

ウィリアムは冷徹な眼差しでヘックスを見据えた。ヘックスがダミアンの血を引く者であると知ったのは彼にとっても初めてのことだったが、それでもウィリアムの冷静さは揺るがなかった。

「人質を解放しろ。そうすれば、国外への安全な退路を保証してやる」

アンソニーは小首をかしげ、ウィリアムを見返した。その漆黒の瞳には、まるで毒蛇のような冷ややかな光が宿っている。

「すまないな、親愛なる兄弟たちよ。このような形で対面せねばならないとは、実に残念だ」

ヘックスは慇懃に一礼してみせた。

「私の実の父はダミアン、そして生みの母はメイビスです。ジェイデンとして生を受けましたが、母の再婚を機にアンソニーと名を改めま...

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