第六十九章

夕食も半ばに差し掛かった頃、ヒルダは自家製の桃の花のワインを一本持ち出し、皆に振る舞った。

「これ、自家製の桃の花のワインなんです。コレクターが集めるような高級ワインには及びませんが、独特の風味があるんですよ。ぜひ召し上がってみてください!」

アルバンを含め、その場にいた全員にそのワインが注がれた。

小さなグラスを手にした瞬間、懐かしい香りがふわりと鼻をかすめた。アルバンはたまらず、その小杯をあおるように一気に飲み干した。

ワインは芳醇な香りを放っていた。本来なら甘いはずのその味だが、アルバンにはなぜか苦く感じられた。

その苦味に、思わず涙が滲む。

ワインの香りに包まれながら、彼は静...

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