チャプター 64

二人は少し歩き、人目につかない寂しい一角へとやってきた。そこは周囲から隔離され、誰の目も届かない場所だった。ヒルダは水をひと口飲んでから切り出した。

「ブリアナ、言いたいことって何?」

ブリアナは言い淀んだ。勇気を振り絞るような素振りを見せてから、ようやく口を開く。

「ヒルダ、知ってるでしょうけど、大旦那様はネイトと私がよりを戻すことを望んでらっしゃるの」

ヒルダは鼻で笑った。それがブリアナの言葉に対する彼女の返答だった。

キャノン家の大旦那様が、ネイサンとブリアナの復縁を望んでいると口にしたのは、これが初めてではない。そうなればヒルダは『自由の身』となり、彼が用意した若い男たちの小隊が...

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