第831章

通話の向こう側で、ネイサンは満面の笑みを浮かべて電話を切った。携帯電話の待ち受け画面を見て、思わず笑みがこぼれる。

一方、彼の向かいに座っていたサミュエルは、言葉を失っていた。

実際には、ネイサンは空港には行っていなかった。代わりに、レヴェリー山へと向かっていたのだ。

山は一面の雪に覆われており、向かいには久しぶりに会うサミュエルが座っていた。

一年の三分の一をターディ市で過ごし、また別の三分の一は世界中を旅して回る。そして残りの四ヶ月を、このレヴェリー山で過ごすのが彼の生活だった。

昨年、師匠が他界したため、彼はレヴェリー山の運営を引き継ぐために戻ってきており、最近になって密かに活...

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