第3章
私が着いたとき、コーヒーカートは繁盛していた。三人が列をなしており、いずれも朝見かけたのと同じタイプの、身なりのいいビジネスマンだった。私は少し離れたところで、携帯をチェックするふりをしながら様子を窺った。
拓真の客とのやり取りは、表面的にはごく普通に見えた。丁寧な世間話、コーヒーの注文、代金の受け渡し。だが、その下には何かがあった。彼の視線の合わせ方。特定のドリンクを手渡す際の、あの独特なやり方。まるで、私には聞こえない別の会話が丸ごと交わされているかのようだった。
列が途切れたのを見計らって、私は窓口に近づいた。
「また君か」と彼は言ったが、その声にはどこか笑みが混じっているようだった。
「また私よ」。私はカウンターに寄りかかった。「儲かってる?」
「まあ、ぼちぼちだな」
「いい場所なの?」
彼の視線が通りをさっと見渡し、それから私に戻ってきた。「それなりの利点はある」
私は試してみることにした。「それで、仕入れ先について教えてくれる? 信頼できるところなの?」
拓真はぴたりと動きを止めた。「仕入れ先?」
「ええ。コーヒー豆とか、ミルクとか、カップとか。そういう普通のやつ」。私はさりげない口調を保ちつつ、彼の顔を注意深く観察した。「だって、あなたのコーヒーって、あんなに……特別なんだもの。きっと、かなり特殊なルートを使ってるんでしょ」
彼の表情に何かがよぎった。理解、だろうか。あるいは、認識、か。
「信用できる仕入れ先もあれば、そうでないものもある」と彼はゆっくり言った。「取引相手は慎重に選ばないとな」
「でしょうね。豆自体はどうなの? この近辺で仕入れてる?」
「一部はな。他はもっと遠くからだ」。彼は口を閉ざし、カウンターの同じ場所を二度も拭いた。「特定の豆は、特別な扱いが必要になる。見た目よりずっと繊細なんだ」
心臓の鼓動が速くなる。私たちはコーヒーについて話している。けれど、まったくコーヒーの話などしていなかった。
「なんだか大変そうね」
「そうだな。特に、リスクの高い注文を扱うときは」
「リスクが高い?」
「一度のミスがすべてを台無しにするような、そういうやつだ」
私は彼をじっと見つめた。彼は私に何かを伝えようとしている。それは確かだった。でも、何を?
「常連客についてはどう?」と私は尋ねた。「彼らは、あなたがやっていることの複雑さを理解してるの?」
「ほとんどの客はいつもの注文が欲しいだけだ。余計な質問はしない」。彼の目が、まっすぐに私を射抜いた。「だが、中には……観察眼の鋭い客もいる」
「それはいいこと? それとも悪いこと?」
「客によるな」
背筋に冷たいものが走った。「じゃあ、私はどんな客?」
拓真はすぐには答えなかった。代わりに、彼は振り返って私の分のドリンクを作り始めた。何も注文していないのに、彼は私が何を欲しがっているか知っているようだった。
彼が作業する間、私はまたしてもその手元に見入ってしまった。素早く、無駄のない動き。練習によって培われた精密さだ。だがそれは、数ヶ月コーヒーショップの店員をやったくらいで身につくような類のものではなかった。
これは体に染みついた動き。プロの訓練だ。
「キャラメルマキアート、ひとつ」と彼は言い、カウンター越しにカップを滑らせた。「泡なし、熱めで、シロップは少なめ」
カップに目を落とし、私は凍りついた。
そこには、完璧なラテアートの技術で、小さなハートが描かれていた。
喉がからからになった。「コーヒーに絵、描いたのね」
「手が滑った」と彼は言ったが、その耳はわずかに赤くなっていた。
私は震える手を抑えながらカップを手に取った。「ありがとう」
「美琴」。彼の声は低く、真剣だった。「コーヒーの仕入れ先について、誰彼構わず質問するのはやめておけ」
「どうして?」
「この商売では、詮索好きな客を好まない連中もいるからだ」
私が返事をする前に、次の客がやってきた。またしてもビジネスマンで、今度は銀髪に高価な腕時計をしていた。
私は脇にどいたが、その場を離れはしなかった。代わりに、コーヒーを飲むふりをしながら、二人のやりとりに耳を澄ませた。
「いつもの?」と拓真が尋ねた。
「いや、今日は何か違うものを試してみたくてね。もう少し……強いやつを」
「どのくらい強いものを?」
「これから来るであろう、いくつかの厄介な朝を乗り切れるくらいに強いやつだ」
拓真は頷いた。「それなら、効きそうなものがあるかもしれない。だが、通常のメニューにはない」
「構わんよ。君の判断を信じている」
拓真が男の飲み物を用意するのを見ていると、彼がいつもとは違う用品に手を伸ばしたことに気づいた。通常のコーヒー豆ではなく、カウンターの下に隠し持っていた小さな容器だ。
その動きは素早く、自然で、普通の客なら絶対に気づかないだろう。だが、私は検察官だ。細部を見逃さないよう訓練されている。
ビジネスマンは満足げな笑みを浮かべ、飲み物を持って去っていった。だがその前に、ほんの少しだけ長く、拓真の手を握りしめていった。
辺りに再び誰もいなくなったとき、私はカートに近づいた。
「面白い客ね」と私は言った。
「みんなそうだ」。拓真は後片付けをしながら、私と目を合わせようとしなかった。
「普通のコーヒーの注文には見えなかったけど」
「君は自分の専門分野に専念した方がいいんじゃないか」
「専門分野って?」
「法律。正義。法的な物事だ」
その言い方に、私は思わず言葉を止めた。「コーヒービジネスは合法じゃないって言いたいの?」
「世の中には、グレーゾーンで運営されているビジネスもあると言っているだけだ」
私の検事としての本能が、今や絶叫していた。これは単純なコーヒー販売ではない。何かの隠れ蓑だ。「拓真、あなたどんなトラブルに巻き込まれてるの?」
「そっとしておいた方がいい種類のやつだ」
「そんなことできない」
「なぜだ?」
「だって……」。私は馬鹿なことを口走る寸前で自分を制した。彼をまだ気にかけている、なんてことを。「だって、私は検事だから。怪しい活動を捜査するのが私の仕事よ」
「それで、これはそういうことなのか? 職務上の関心ってやつか?」
私は自分のコーヒーカップに目を落とした。泡の中でゆっくりと溶けていく小さなハートに。「わからない」
「美琴」。彼の声が、今度は柔らかくなった。「物事は見た目より大きいことがある。中には、予測不可能な結果を招く捜査もあるんだ」
「見て見ぬふりをしてくれって頼んでるの?」
「俺を信じてくれと頼んでいる」
「最後にあなたを信じたとき、あなたは私の心をめちゃくちゃにしたわ」
言葉は、意図したよりもずっときつく響いた。拓真はまるで平手打ちでも食らったかのように身をすくませた。
「その通りだ」と彼は静かに言った。
私たちは気まずい沈黙の中に立っていた。もう行くべきだ。職場に戻って、この会話などなかったことにするべきだ。
それなのに、私はなぜ自分が最初に彼に惹かれたのかを思い出していた。誰よりも三手先を読むことのできる思考力。守られていることすら気づかせずに人々を守る、そのやり方。まるで私たちがパートナーで、二人なら何でも乗り越えられるかのように感じさせてくれた、あの感覚。
ああ、私はまだ彼を愛している。
その事実に、物理的な衝撃を受けたように打ちのめされた。胸の奥で何かが崩れ落ちるような感覚。十八ヶ月かけて築き上げた心の防壁が、一瞬で瓦解していく。
彼なしの方が幸せだと十八ヶ月もの間自分に言い聞かせてきたのに、今、私はここにいる。彼が何に巻き込まれているのかを理解するためだけに、自分のキャリアを投げ出す覚悟で。
「これを報告すべきだわ」と私は言ったが、その声には何の確信もこもっていなかった。
「だが、君はしない」
「どうしてわかるの?」
「君がここにいるからだ。何度も戻ってくるからだ」。彼は間を置いた。「君は、そうしたくても、気にかけるのをやめられなかったからだ」
彼は正しかった。そして私たち二人とも、それをわかっていた。
私は沈黙の中でコーヒーを飲み干した。一口飲むごとに彼の描いた小さなハートが消えていくのを、過剰に意識しながら。飲み終えると、私はカップをくしゃくしゃに潰し、近くのゴミ箱に放り込んだ。
「明日も同じ時間に?」と拓真が尋ねた。
「どうかしてるわ」
「ああ。そうだな」
だが、私はすでに頷いていた。「明日も、同じ時間に」
私が背を向けて去ろうとすると、彼が私の名前を呼んだ。
「美琴?」
私は振り返った。
「カップホルダーを確かめてみろ」
私は眉をひそめ、それから空になったカップの周りのボール紙のスリーブに目をやった。その内側に何かが挟まっている。
小さな紙切れだった。
私はそれを引き出し、広げ、拓真の見慣れた筆跡で書かれたメッセージを読んだ。
*今夜会おう。47番埠頭、午後9時。一人で来い。*
手が震えた。これは単なる元恋人との再会ではない。何か大きな事件の渦中に足を踏み入れようとしている。
振り返ると、拓真はもう次の客の対応をしていた。まるで何も起こらなかったかのように。
