第9章

拓真から何の連絡もないまま、一週間が過ぎた。

彼の謎めいた電話や、「予定の変更」が何を意味するのか考えないように、私は仕事に没頭した。けれど毎朝、裁判所へ向かう途中、松ノ木通りと二番街の角に近づくと、自然と足が遅くなるのだった。

コーヒーカートは消えていた。その角には、やたらと値段の高いサンドイッチを売る新しいフードトラックが一台あるだけだった。

これでよかったのだと自分に言い聞かせた。拓真は結局、あの警視庁の特別任務を引き受けたのだろう。今頃はもう国を半ば横断し、どこか新しい場所で潜入任務に就いているに違いない。

その方がいい。後腐れがなくて。

少なくとも、私はそう自...

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