第35章

白原明子は黙り込んだ。

表情には、迷いがありありと浮かんでいる。

目の前にいるのは、彼女がいちばん嫌う相手だ。胸の内を素直に晒す気にはなれない。

「どうせ金食い虫でしょ。江村家に入ったって、最後は追い出されるのがオチよ」

白原明子は結局、強がるように吐き捨てた。

「いい? あの子が江村家に入らないよう祈ってなさい。入ったら――どうしてやるか、覚悟しなさいよ!」

松原南は、初めてその言葉に噛みつかなかった。

胸の奥で燃え上がる苛立ちを無理やり押し込み、含みのある視線で白原明子を見る。

「クルミを江村家に行かせたくない、江村成宏に認め直されたくない……あなたがそう思うなら、私も同...

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