第36章

手術が、まもなく始まる。

松原南は視線を落としたまま、刻一刻と減っていく時間を見つめ、ゆっくりと肩の力を抜いた。

やっぱり。

この件を白原明子に任せたのは、いちばん正しい。

唇の端に、かすかな笑みが浮かぶ。彼女は顔を上げ、手術室のほうへ目をやった。

――けれど。

視界の端に、見覚えのある影が映った。

男がこちらへ歩いてくるのを、松原南は呆然と見つめ、思わず眉をひそめる。

「藤原若様、どうしてこちらに……?」

先に口をついたのは問い詰める言葉だったのに、途中で彼女は言い換えた。

「……お体の具合が悪いんですか?」

そっと目を上げ、目の前の端正な男をうかがう。

氷のように...

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