第44章

松原南は、少し意外に思った。

藤原様を直接目にしたことはこれまでなかったものの、この数日、報道では嫌というほど見ている。

世間からすれば、あの人はいつだって笑みひとつ見せない、近寄りがたい人間のはずだった。

それなのに今は、たったひとつの呼び方のせいで、もともとやつれて青白かった顔色にまで、うっすら血の気が戻って見える。

クルミは昔から、人懐っこさの塊みたいな子だ。

お婆さんとすっかり打ち解けたせいか、ついでにベッドにいるお爺さんのことまで怖がらない。松原南がいいと許すと、病床のそばにまでちょこちょこと寄っていった。

にこっと甘い笑みを浮かべ、クルミが言う。

「お爺さん、りんご...

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