第50章

くだらない戯れ言なんて、松原南はとっくに聞き飽きていた。

「江村成宏、今のあなたって、私のことを舐めてる?」

止まらない言葉を遮り、指先で机をコツ、コツと叩く。

「あなたが好き勝手言えるなら、私だって「事実」はいくらでも曲げられる。そういうこと、忘れた?」

ふっと笑った南は、目の前の男が一瞬たじろぐのを見て、妙に滑稽だと思った。

「……どういう意味だ」

江村成宏が言葉を切り、目つきが鋭くなる。

「結婚するとき、あなた……弱精子症のこと、私に一言も言わなかったわよね」

口元だけを吊り上げ、視線は冷え切っている。

「もし私が今、裁判所に行って「病気を隠して結婚した」って訴えたら...

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