第55章 ハート・オブ・オーシャン

鈴木瑠璃が引き起こした騒動は、ほんの一時の小さな波紋に過ぎなかった。その場にいた人々は皆、内心では面白おかしく見物したい気持ちを抱きながらも、それぞれが知名度のある公人だけに、公の場で噂話に興じるわけにもいかなかった。

一人一人が疑問や好奇心を胸に秘め、家に帰ってから人を遣わして調査し、じっくりと事の顛末を楽しもうと思っていた。

そのため、会場はすぐに静けさを取り戻した。

オークションの雰囲気は依然として熱気に満ち、華やかな照明が会場を彩り、スポットライトがステージ上で明滅しながら、一つ一つの出品物の豪華さと貴重さを照らし出していた。

北野美月は傍らに立ち、視線を漂わせながらも、心の...

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