第58章 救援

黒服の男は素早くもう片方の手を山崎霧の顔へと振り上げた。

山崎霧は機敏に反応し、頭を下げて避けると、すぐさま力強い一撃を放ち、黒服の男の顎を直撃した。男はよろめきながら後退し、顔には驚きと怒りの色が浮かんだ。

男は血を吐き出すと、親指で唇の端の血を拭い、再び山崎霧に向かって飛びかかった。

しかし山崎霧は自分が血を見ると気分が悪くなることを知っていたため、黒服の男を見上げることができず、先機を逃してしまった。黒服の男に首を掴まれ、壁に押し付けられ、屈服を強いられた。

そのとき、予備電源が作動し始め、照明が明滅しながら再び灯り、会場全体に徐々に光が戻ってきた。角度の関係で、黒服の男の視線...

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