第56章

人殺しの相沢怜を、藤堂彰人はまだ愛せるというのだろうか?

私は口の端を吊り上げた。

肯定しようが否定しようが、どちらも滑稽に思える。

私の結末に、何の変化もないのだから。

「もう聞いたわ。彼女が自分の口で認めたの。橘剛と共謀して、私の母の死を画策したって。藤堂彰人、あなたはいつも私のことを毒婦だって言ってたじゃない? 今、あなたの愛する相沢怜の手も血に染まったわ。それでも彼女は毒婦じゃないって言うの?」

藤堂彰人の表情は終始変わらない。彼はまたしても、私を笑い者にした。

「橘杏奈、誤解よ。私はただお父様と話していただけで……叔母様がそんなに早く亡くなるなんて思ってもみなかったわ。あ...

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