第66章

藤堂彰人がお祖母様の病室の外に現れたのは、偶然ではないと確信していた。

そんな都合のいい偶然があるものか。

私を連れ戻しに来たのだろうか?

待つ? 彼が誰に待てと言ったの? 相沢怜に?

刹那、万感の思いが脳裏を駆け巡った。我に返った時には、藤堂彰人はすでに病室のドアの前に立っていた。

彼と顔を合わせたくはなかったが、今ここで逃げ出せば、お祖母様の前で全てが露見してしまう。

「お祖母様」

藤堂彰人は贈答品らしき箱を手に提げていた。近づいてみると、それは上質な高麗人参だった。

どうやら一人で来たらしい。

彼がお祖母様と話している隙に病室の入り口まで行ってみたが、やはり近くに他の誰...

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