第71章

スマホが鳴りやまない。ブロックするのも億劫で、マナーモードにしてテーブルの上に置いた。

もう午後だ。紅茶でも淹れて気分転換しようかと思ったが、お腹の小さな命のことを思い出し、白湯を注ぐだけに留めた。

ところが、カップを持ち上げようとした瞬間、指から力が抜けるような痛みが走った。

ガチャン、と音を立て、磁器のカップは数えきれないほどの破片と化した。

スリッパの中に飛び込んできた破片もある。ほんの数歩後ずさっただけなのに、鋭い刃物のように足の裏の皮膚に食い込んだ。

たいして痛くもないはずなのに……。

物音を聞きつけた神崎優香が寝室から飛び出してきて、私の目の前の惨状を見るなり大声で制し...

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