チャプター 265

私はその場に凍りついたまま、大きなスズカケの木の下からヘンリーがこちらへ歩いてくるのを見つめていた。

ちらつく街灯が、背の高いほっそりした彼の姿を照らし出す。彼はわざと歩調をゆるめ、指のあいだには吸いかけの煙草が一本挟まれていた。

夜風が黒いコートの裾をさらい、すらりと長い脚がのぞく。指先で燃えてゆく最後の一本を惜しむように、彼はひどくゆっくりと歩いていた。

その姿を見ていると、私は時をさかのぼったような気持ちになった。

神に不公平なほど愛されたかのようなあの顔――何年も前に私が恋に落ちた、その顔は、私たちのあいだにどれほどのことがあったとしても、やはり同じように私の心を揺らした。

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