チャプター 285

ヘンリーは、まるでひと言も耳に入っていないかのように、ほんのわずかも足を止めず、そのまま歩き続けた。

彼の胸中にあったのは、ただひとつの疑問だった。ソフィアのどこに、ここまで心を砕く価値があるのか。いくら考えても、明快な答えはひとつも浮かばない。

それでも、彼女と一緒にいたいと思ってしまう。共に過ごす時間は楽しかった。幸福な瞬間などそう多くはなかったというのに。それでも、そういうものなのかもしれない。相手のどこがいいのか説明できなくても、その人の姿を目にしただけで、一日の色合いがふっと明るくなることがある。

ナディアはヘンリーから何の返事ももらえなかった。それでも諦めきれず、遠ざかってい...

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