第287章

「ハーディング夫人」ジェームズは、いつもと変わらない磨き上げられた恭しさで私にそう告げた。

私は反射的に体を強ばらせた。

「ジェームズ、私はもうハーディング夫人じゃないの。もうそう呼ばないで。いい?」

彼を訂正するのは、これが初めてではなかった。

何年も前から、私はヘンリーの妻ではないのだと何度ジェームズに言い聞かせてきたか数えきれない。けれど彼は、離婚などなかったかのようにその呼び名に固執し続けた。

ジェームズは、私の訂正などまるで気にしていない様子だった。代わりに「分かってますよ」とでも言いたげな笑みを浮かべ、目元をきらりとさせる。腹立たしいほどの得意げな光だった。

「奥さま、...

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