チャプター 59

グレースの病室へ向かうエレベーターの時間が、やけに長く感じられた。ヘンリーはまだ私の手を握ったままで、親指がときおり肌をなぞる。そのたびに、望まないぞくりとした震えが腕を駆け上がった。

私たちはもう、修復しようのない対立の地点にまで来ている。なのに、なぜ仲むつまじい夫婦のふりを続けるのか。理解できなかった。

廊下ではビリーが先に駆けていった。両親のあいだの張り詰めた空気など露ほども知らず、軽やかに跳ねる背中を見ていると、その無垢さが羨ましかった。

「いいか」ヘンリーが低く囁いた。「何があっても、礼儀正しく振る舞え。あいつはまだ、俺の妹だ」

言い返したい衝動を飲み込む。五年ものあいだ脅し...

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