第九十二章

ヘンリーの足音が病院の廊下の奥へと次第に消えていくのを見届けると、イザベラは携帯電話を取り上げ、連絡先を指で滑らせていった。目当ての名前を見つける。

「グレイス? イザベラよ。会いに来て――この病室、退屈で死にそうなの」

一時間もしないうちに、グレイスは目的地へまっすぐ向かう足取りで個室のスイートに入ってきた。磨き上げられた床に、ハイヒールの音が鋭く響く。ベッドの上で上体を起こしているイザベラを見つけると――家族に対してヘンリーが「危篤」とまで言っていた患者とは思えないほど健康そうで――グレイスの口元にいたずらっぽい笑みが広がった。

「へえ、ずいぶん快適そうじゃない」グレイスはそう評し、...

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