第33章

初音は呆れて笑うしかなかった。

「親切心なんかじゃないわよ、仕方なくだってば。万が一あそこで死なれたら、最後に接触したのが私になっちゃうじゃない。見捨てて警察が来たら、どう説明しろっていうの」

「こっちは頭を抱えてるのに、よく冗談なんて言えるわね」

「ちょっとはリラックスさせようと思ってさ」

梨乃はへへっと笑う。

「ほら、顔真っ青だよ。幽霊でも見たみたい」

初音は苦笑し、無意識に後部座席を振り返った。

男は眉間に皺を寄せ、少し意識を取り戻したのか、時折苦しげな呻き声を漏らしている。蒼白だった顔には次第に危険な赤みが差し、腹部から絶え間なく滲み出す血が、すでにシートを大きく赤く染...

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