第26章 あの時あんなことが起きなかったら

オーロラ・ロス視点

俯いたはずなのに――耳元で、低い笑いが落ちた。

顎をくい、と持ち上げられる。

次の瞬間、アレックスの唇が重なった。

驚いて目を見開く。ここは会社だ。どうして、こんな場所で。

押し返そうと両手に力を込めたけれど、この程度でアレックスが揺らぐはずもない。

舌が口内へ割り込み、支配するように絡め取られる。

巧すぎる。

あっという間に膝が緩み、呼吸だけが早くなった。

「ん……」

舌が抜けた瞬間、ようやく息をつける――そう思ったのに。

アレックスの指の腹が、今度は私の唇へ落ちてくる。

ぐ、ぐ、と押し潰すみたいに、執拗に。

焦りで喉が詰まった。

腫れたら終...

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