第165章 虎穴に入らずんば虎子を得ず

諏訪淳行の瞳は、吸い込まれそうなほど黒かった。

夏川紅蓮は、理由もなく胸の奥の苛立ちがすっと薄れていくのを感じる。

けれど――手をつながれるのは。

振りほどくべきか迷っていると、諏訪淳行がほんの少しだけ距離を詰め、低い声で囁いた。

「みんなには、君は俺が招いたって言う。ここに来た目的を疑う奴はいない」

夏川紅蓮は、わずかに目を見開く。

――この人、私が何をしに来たか、もう読んでる。

以前なら「心を見透かされる」ことは不快だった。けれど諏訪淳行に見透かされるのは、なぜか楽だった。肩の力が抜ける。説明がいらない。

否定できない。夏川紅蓮は、頭の切れる人間が好きだ。

賢い相手との...

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