第51章 彼の許嫁を奪う?

屋敷の中はひどく騒がしく、夏川紅蓮が外へ出てしばらく歩いても、まだ喧噪は背中にまとわりついてきた。

ようやく少し静かになったところで、彼女はスマホを取り出し、たにへ電話をかける。

「前に話しておいた移転の件、明日から正式に動かして」

電話の向こうで、たにの声がぱっと明るくなった。

「そんな大きな工場なら、貸すだけでもかなり儲かるでしょうに……夏川懐理さん、本当に丸ごと譲ってくれたんですか?」

「ええ」

「ってことは、夏川家の方々、あなたにずいぶん良くしてくれてるんですね」

紅蓮は否定しなかった。

夏川懐斗という、どうにも頭のおかしいのを除けば、他はたしかに悪くない。

とくに...

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