第64章 彼女こそ絵画大先生、山河

相馬照一は夏川紅蓮へ歩み寄りながら、切羽詰まった声で言った。

「お嬢ちゃん、君の言う通りだ。実は俺も最近、自分の絵がどこかおかしい気がしてた。でも、どこがどうおかしいのか、自分じゃ言葉にできなくてな……教えてくれないか。これから先、どうすれば君の言ったような状態を避けられる?」

夏川紅蓮は口元だけをわずかに吊り上げ、言う。

「あなたの問題は、山や岩じゃない。水の流れでも、雲や霞でもない」

「問題は――欲しがりすぎたこと」

「欲張ったせいで、あなたの絵がいちばん持っていたものを失った」

「魂」

「それが、最近あなたが『おかしい』と感じる理由」

魂――。

相馬照一は、はっと息を...

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