第65章 彼女はワシの師匠

諏訪淳行はさっきまで、誰がそんなに命知らずで、自分の縄張りで騒ぎを起こすのかと考えていただけだった。

だが、夏川紅蓮が人垣にぐるりと囲まれているのを目にした瞬間、背筋がひゅっと強張る。

無表情だった端正な顔に、はっきりとした冷えが差した。視線は、紅蓮を取り囲む連中に釘づけになる。

胸の奥から、これまで味わったことのない焦りと怒りが噴き上がった。心臓の内側で火が燃え広がり、理性の枷を今にも引きちぎりそうな勢いで。

広瀬剛が動くより早く、淳行は先に人混みへ踏み込んだ。

――しかし、彼が何かをするより先に。

老いた声なのに、芯の通った一喝が場を裂いた。

「やめろ!」

声の主は相馬照...

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