第9章 薬を奪う

高見唯月は真っ黒な顔で薬材店を出ると、道路向かいに停めてある高級車へ真っすぐ向かった。

そのタイミングで、車から眉目秀麗な男が慌ただしく降りてくる。

仕立てのいいスーツをきっちり着こなし、金縁の眼鏡。いかにも温厚そうなインテリ顔だ。

高柳月代の息子、江口沢――それが彼だった。

もともとは高見グループの営業部門で平の社員にすぎなかったのに、高見唯月に取り入ってから一気に出世し、いまや広報部の部長職まで手にしている。

ほどなく彼は、高見唯月と結婚する。

江口沢の姿を見た途端、高見唯月の表情にふっと脆さが滲んだ。胸の奥に溜めていた悔しさが、堤防を切った潮のように押し寄せる。

「さわ…...

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