第5章

夏美のその鋭い眼差しは、彼女がただ者ではないことを確信させた。

だが、今はそれを深追いしている場合ではない。豪がすでに行動を開始していた。

それからの数日間、豪は芸能界への復帰を試み、狂ったように履歴書を送りまくった。東京中の芸能事務所を駆けずり回り、様々なオーディション会場にその姿があった。

しかし、結果はいつも同じだった。

「申し訳ありません、神谷さん。今のところ、あなたに合うポジションはございません」

「でも、昨日検討してくださるって……」

豪は困惑して尋ねる。

「ええ、ですが……少々状況が変わりまして」

私は雪野グループのオフィスで、優雅に茶を啜っていた。...

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