第29章

浅川月からの電話に出たとき、沈村蓮はすでに自分のマンションへ戻っていて、書斎で何かを探していた。

浅川月の驚きっぷりは、スピーカーにしなくても十分すぎるほど伝わってくる。離れていても耳に刺さる声量だった。

「ちょ、ちょっと待って! あなた、T大研究所の上級研究員って……マジで!? なんで今まで言わなかったの!!」

沈村蓮は片手で耳を押さえ、無表情のままスマホを少し遠ざける。

「落ち着け」

「???」

――落ち着けるわけがない。

自分が担当しているタレントが、昨日まで「高校中退のどうしようもない子」扱いだったのに、いきなり学術界の大物に化けたのだ。誰が平常心でいられる。

浅川月...

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