第68章

帰り道、沈村蓮のスマホが鳴った。田山監督からだ。

「沈村蓮さん。この前お会いしたときに頂いた符が……その……」

歯切れが悪い。どう切り出せばいいのか迷っている声だった。

沈村蓮は助手席で、さっき買った肉まんを頬張っている。運転しているのは藤原洋介。

食べる手を止めたくなくて、沈村蓮はスピーカーに切り替え、スマホを前に置いたまま「ああ」と短く返す。

「前の符? もう使ったでしょ」

その言い方に、藤原洋介がちらりと沈村蓮を見た。ついでに、さっとティッシュを一枚差し出してくる。

受け取った瞬間、電話の向こうで田山監督が裏返った声を上げた。

「本当に使ったんですか?! あれ、事故のあ...

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