第82章

葉山和也と葉山詩音が二階へ上がったのを見届けるなり、沈村茜は堪えきれず口を開いた。

「明志って子、今回はどうしてあんな無鉄砲な真似をしたの? T市の人間にまで喧嘩売るなんて……」

少し前まで、沈村茜がいちばん気に入っていたのは鈴原明志という「内定済みの婿」だった。家柄、能力、容姿――どれを取っても詩音と釣り合っているし、詩音への態度も悪くない。

来週、詩音が入学の手続きを済ませたら鈴原家へ出向き、両家の婚約の話を進めるつもりでいた。なのに、まさかこんなことになるなんて。期待が丸ごと無駄になった気分だった。

葉山成也と葉山時雄が視線を交わす。

葉山時雄が、どこか言いにくそうな顔で言っ...

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