第33章 私は自転車に乗れない

私は森川琴子の腰を軽くつねった。琴子は笑いながら横に避けた。

私の視線は藤原大輔に釘付けになり、もう動かせなかった。彼は白いスポーツウェアを着て、片足をマウンテンバイクにかけて、まるで太陽のように輝いていた。

彼は首をかしげて私を見つめ、顔には微笑が浮かんでいた。

その顔、その笑顔、まるで天使のように美しい。

後で知ったのだが、森川琴子が言っていたイベントはサイクリングだった。

真実を知った私は小声で「自転車に乗れない」と言った。

田中雄介は笑って「大丈夫、大輔が君を乗せてくれるよ。今日は特別に後部座席をつけたんだ。もちろん、前に座るのもいいけどね」と言った。

「うるさい」と藤...

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