第40章

「八月八日か、その日取りはまさに絶妙だな」

私は椅子から立ち上がり、手に持っていた半分のパンをゴミ箱に投げ捨て、渡辺光に向かって無害そうな笑みを浮かべた。

「でも、挙式日は縁起を見るって聞いたわ。縁起の悪い日を選んだら、結婚後も幸せになれないんじゃないかしら」

まもなく結婚する人間がこんな不吉な話を聞かされ、秋山美咲の顔から偽りの笑顔が消えた。

「佐々木佳恋、悪意があるわね。わざと私たちを呪ってるんでしょ」

私はいかにも無実そうに肩をすくめた。「大げさな話じゃないわよ。前例だってあるでしょ?私が渡辺光と結婚した時だって、適当に日を選んだわ。今思えば、きっとその日は良くなかったのね。...

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