第7章

美奈子視点

その書類を手にした瞬間、ようやく幸福感を覚えた。二冊のパスポート、二枚の運転免許証、そして二つのまったく新しい身分。田中恵理奈と田中咲子。誰もわざわざ調べたりしないような、どこにでもある小さな町の出身の姉妹。

「今日から、あなたは咲子よ」私は恵美の新しいパスポートを掲げながら言った。「私は恵理奈。それを覚えておかないと」

恵美はパスポートを受け取ったが、その手は震えが止まらなかった。「咲子ね。わかった。でも、本当にこんなことするの? 何もかも捨てて、どこかへ行ってしまうなんて」

「私たちに残された選択肢は、これしかないの」私は二冊のパスポートをバッグに押し込み...

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