第5章

櫻木霊園の錆びついた鉄門の前を、高橋真一はまるで檻の中の獣のように行ったり来たりしていた。ブランド物のポロシャツが、じっとりとした汗で背中に張り付いている。三十秒おきにスマートフォンを取り出しては、画面を睨みつける。まるで私がどこかの隠れ家から、気まぐれに返信でもしてくると信じているかのようだ。

「ふざけやがって」彼は額の汗を拭いながら呟いた。「理紗のやつ、どこかのホテルの部屋からこれを見て、腹を抱えて笑ってるに違いねえ」

だが、彼の手が微かに震えているのが見えた。霊園の奥へと続く道を見つめるたび、その顎がギリッと食いしばられるのも。

頭では頑なに否定しながらも、心のどこかでは真...

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