第6章
高橋真一は、まるで亡霊にでも取り憑かれたかのように、小嶋美咲の家の玄関によろめきながら入ってきた。シャツには深い皺が刻まれ、髪は乱れ、そして何よりその異様さを際立たせていたのは、右手の甲におぞましい装飾品のようにこびりついた、乾いた血だった。
私は天井近くを漂っていた。実体のないこの身は、それがもたらす苦痛にもかかわらず、目の前で繰り広げられる人間ドラマから目を逸らせなかった。
死んで三日。だというのに、私はまだ高橋真一の人生が崩壊していく様を見せつけられている。これは罰なのだろうか。それとも、ようやく訪れた正義の執行なのだろうか。
キッチンでは、小嶋美咲が高級そうなワインソー...
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チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章


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