香り付き。

アリーシャ

エンヴィーはマジで最高にかっこいい。誤解しないでほしいんだけど、トレーニング中の彼女は鬼のように厳しくて、私の全身の筋肉が慈悲を乞うて悲鳴を上げてるような状態になる。でも、人としては? 彼女は最高だ。この辺りの女子たちは私の友達のフリをしているけど、みんな偽物ばかり。彼女たちが求めているのは地位や注目、私の兄弟たちとのコネ、あるいは「次期ルナ」になるチャンスだけ。あの子たちが気にかけているのは、髪型や服装、そして誰に見られているかということばかりだ。

でもエンヴィーはそんなこと一切気にしていない。彼女は孤児で、戦士たちに育てられ、剣を持たせれば恐ろしいほどの腕前で、いつか人を助けるために医学部に進学したいと思っているらしい。あ、それと彼女には友達が一人もいない。だから私が「今日から親友になろうよ」と言ったとき、彼女はまるで人生最高の日であるかのように、甲高い声を上げて喜んだ。私たちは連絡先を交換して、今ではトレーニングがない週末に遊ぶ計画を立てている。

「そろそろ行かないと。ディナーのシフトがあるから」と、彼女は時計を確認しながら言った。

「そういうことって、オメガたちがやるんじゃないの?」

「やってくれるけど、私は料理が好きなの。それに、口座にお金も貯まるしね」

「私なんて、命がかかってても料理なんて作れないわ。今度教えてよ。トミーも喜ぶだろうし」私はにやりと笑った。「とにかく、そうね、私もそろそろ準備しなきゃ。数日おきに他のパックを迎えて晩餐会を開いてるのよ。例の『次期ルナ探し』ってやつ」

彼女は鼻を鳴らして笑った。「疲れそうな話ね」

本当、その通り。

ハイデン

俺はティファニー……いやステファニーか? それともジュリーだったか? とにかく、長く必要不可欠だった情事を終えて、彼女を玄関まで見送った。同じ女とは二度寝ない。そんなことをすれば面倒なことになるし、選ばれるかもしれないという妄想を抱かせるだけだ。俺たちに選ばれるなんてことは、彼女たちの誰にもあり得ないのに。ノアとレヴィは、自分たちの相手の女に「最後は結ばれる」と信じ込ませているんだから馬鹿な奴らだ。

俺は18歳になってから数年は運命の番(つがい)を待っていたが、結局は折れた。俺は欲のあるアルファのオスだ。そうすべきじゃなかったとは分かっているが、今さら遅い。彼女の車が走り去り、息が詰まるような香水の匂いがようやく消えたその瞬間、何かが俺を直撃した。

バニラとブルーベリーの香り。甘く、柔らかく、そして中毒性がある。

俺は弾かれたように顔を上げた。

番だ。俺の番だ。

身体中のあらゆる繊維がそう告げている。心臓が、魂が、俺という存在のすべてが、その香りの元へ行き、彼女を見つけ出せと叫んでいる。俺は急いで家の周りを走り、空気を吸い込んでその糸を辿ろうとした。微かで、風に乗って庭を漂っているため、追跡するのは困難だ。彼女はついさっきまで近くにいたはずだ。午後の微風に香りが残る程度には。

だが、ようやく痕跡を掴んだと思ったその時、別のパックからの雌狼たちを乗せた車の列が私道に入ってきた。

「クソッ!」

俺は悪態をついた。香りを完全に見失ってしまったからだ。

ザビエルのバイクが彼女たちの後ろに止まる。父さんと母さんが客を出迎えている間に、俺はザビエルの腕を掴んだ。

ザビエル

境界線でシフト調整をしていた時、バニラとブルーベリーの香りを捉えた。甘くて、温かくて、完璧で……間違いなく俺の番だ。待ち焦がれ、切望し、ほぼ毎日夢にまで見た相手。俺は香りを追いかけようとして、自分の足にもつれて転びそうになったほどだ。ヘルメットも被らずにバイクに飛び乗り、馬鹿みたいに鼻を高く突き上げて、風を追った。香りは通りを漂っていて、微かだが確かにそこにあった。彼女だ、彼女に違いない。

その時、訪問パックの車たちが到着した。俺は彼女がその中にいることを願いながら、後をついて家まで戻った。

バイクから降りた瞬間、ハイデンが俺を掴んだ。

「お前も匂ったか!?」

「兄貴も気づいたのか!?」俺は問い返した。

「ああ! 俺たちの番がここにいたんだ! まさにここで匂ったのに、消えちまった」

「俺は境界線と、町中でもずっと感じてた」

彼は俺のシャツを掴んだ。「クソ、彼女はここにいる。見つけなきゃ。ノアとレヴィにリンクを送れ。今すぐだ」

俺が答える前に、母さんが後ろに現れた。

「誰がいるの、あなたたち?」

「彼女だ」ハイデンが口走る。「母さん、俺たちの番だ。匂いがしたんだ! 彼女はここにいた。探しに行かないと!」

母さんは片眉を上げ、正面階段を上がってくる客たちの方を示した。「彼女がクレセント・パックと一緒に来ている可能性は考えなかったの?」

「分からないんだ」俺は認めた。

「どのみち、二人とも客人に挨拶しなさい。あなたたちは未来のアルファなのよ。あとの二人はどこ?」

俺たちは顔を見合わせて肩をすくめた。

「呼びなさい」母さんは言った。「それと、あの連れの雌狼たちは連れてこないように伝えて」

ノア

レヴィと俺は、ダイナーのボックス席で女たちと座っている。正直、居心地は悪い。普段ならヤッて終わりにして次に行くところだが、たまにはこうして機嫌を取っておかないと、ぐずぐずうるさいからな。

その時、ザビエルが俺たち二人にリンクを送ってきた。『彼女がいる』

『誰がいるんだ?』俺は尋ねた。

レヴィが目を見開くのが見えた。『番か!?』

ハイデンがリンクに加わる。『俺たち二人とも匂いを感じた。強くて甘い香りだ。でも消えてしまった』

「今行く」俺は声に出すと同時にリンクでも伝え、すでに席を滑り出ていた。

「ちょっと! 二人ともどこ行くのよ!?」ルーシーが金切り声を上げたが、俺は振り返らなかった。

もし俺たちの番がいるなら、他のことなんてどうでもいい。

レヴィ

7年だ。待ち続けてきた長い長い7年。それなのに、彼女は現れて、同じ時間のうちに消えてしまっただと?

「クソッ!」

俺は俺たちのプライベート棟にあるソファに足を叩きつけ、叫んだ。「どうして指の間からすり抜けちまったんだ!? もし見失ったらどうする!?」

「見失わないさ」ザビエルが言ったが、その声には不安が滲んでいる。「彼女がここにいたのには理由があるはずだ」

ハイデンが書類の束を持って入ってきた。

「それは?」俺は尋ねた。

「巡回ログだ。今日、誰が出入りしたか誰かが見ていたかもしれない」

ザビエルが顔をしかめた。「それが問題なんだ。門番をしていた戦士たちが、さっきのはぐれ狼(ローグ)の襲撃で気絶させられていた」

「それに配達もあったし、訪問パックに、医療搬送も……」ノアが付け加える。

俺たちは国内でも最大級のパックだ。人の出入りはひっきりなしにある。

「俺たちの番は、どこの誰とも分からないってことか」ザビエルが呟いた。「それに、彼女はもう匂いの届かない場所にいる」

「クソッ!」

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