第31章

篠原菫子は黙っていた。

高橋亮太が初めて彼女に接したとき、彼女は高橋亮太が自分に対して金持ちが暇つぶしに探す遊びのようなものだと見抜いていた。

篠原菫子はそんな遊びに付き合えないが、高橋亮太を怒らせることもできなかった。

彼女は高橋亮太に無理やり笑顔を作り、先に進み続けた。

「乗れよ!」高橋亮太は腕を車の窓に無造作にかけながら笑った「怖がるなよ、何もしないから。俺だってやりたいけど度胸がない。そんなことしたら藤原兄に挽肉にされちまうからな」

篠原菫子は高橋亮太をちらりと見た。

高橋亮太は車を止め、降りてドアを開けた「このまま歩いていくのか?真っ暗な道で、俺より悪い男に出くわしたら...

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