第33章

遠くから見ていた林田大地一家三人はさらに恐怖で体が完全に硬直していた。

一方、藤原和也は医師に続いて救急診療室に入った。診療室内では、意識不明の篠原菫子が両目を固く閉じ、眉間にしわを寄せていた。濃くカールした長いまつ毛は涙で濡れ、本来なら美しいはずのそれも今は力なく垂れ下がっていた。

手のひらに収まりそうな小顔は、熱で紅霞のように染まっていた。

藤原和也が篠原菫子の側に近づくと、彼女はまだ譫言を口にしていた「赤ちゃん、ママから離れないで...お願い...ママには身寄りがないの...ママは...寂しいの...ママは...誰かがいないと、生きていけないの...」

その声色は悲痛で哀れで、...

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