第39章
林田月は、誰にも気づかれぬよう両の拳を固く握りしめ、爪が食い込んで掌の肉を痛めつけてもなお、その痛みに顔色ひとつ変えなかった。それでも彼女は、恥じらいと怯えを滲ませた卑屈な眼差しで藤原和也を見上げる。
「和也お兄ちゃん……わたし……身体はもう全部、あなたのものになっちゃったの……。わたし、一生、あなただけを男として認めて生きていくって決めたの。あなたがわたしをいらなくても、かまわない……。ほかに何も望まないから……ただ、毎日一目でいいから、あなたを見ていたいの」
藤原和也は心の中の吐き気を必死に抑えていた。
この女に対する我慢はもう限界だった。もし彼女が林田月でなければ、もし彼女が体を張...
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