第47章

篠原菫子也は驚いた表情で顔を上げ、藤原和也を見つめた。なぜ彼がここに現れたのか理解できなかった。だが、すぐに思い至る。このクルーザーには富裕層の子女しかいないのだから、藤原和也がいても不思議ではない。

藤原和也はスーツで篠原菫子の体をしっかりと包み込むと、彼女を抱き上げて自分の胸に引き寄せ、周囲の男女たちを険しい顔で睨みつけた。

先ほどまで盛り上がっていたクルーザーの雰囲気は一瞬にして水を打ったように静まり返った。

このクルーザーに乗る者で、藤原和也を恐れない者などいなかった。

一月あまり前なら、彼らはおそらくこれほど怯えることもなかっただろう。いや、藤原和也の顔すら知らなかった者も...

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