第50章

高橋亮太は逞しい腕で彼女をひょいと抱き下ろし、そのまま床に降ろした。唇の端には、相変わらず邪悪さを帯びた笑みが浮かんでいる。

「なんだよ、その冷たい態度は。俺がクルーズのパーティーで、おまえが佐藤和也を狙ってるって言ったからか? それとも、おまえが笑いものにされてた時に手を貸さなかったからか? ……意外と根に持つタイプなんだな」

「恨んでなんかいません」

彼女は本当に恨んでいなかった。

高橋亮太と篠原菫子はどんな関係なのだろう?

何の理由があって恨むというのか?篠原菫子はどんなことでも冷静に考えられる人間だった。

「いいか、おまえあの日のやり方じゃ、誰だって手を出せるわけがねぇん...

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