第55章

電話の向こうから林田月のすすり泣きがさらに激しくなった「藤原さん、もう二度とあなたを訪ねたりしません。どうか、この子を残させてください。お腹の子を連れて遠くへ行きます。二度とあなたに会うこともなく、この子にあなたが実の父親だと知らせることもありません。お願いです…」

「今どこにいる!」藤原和也は切迫した声で尋ねた。

背後では、会議を待っていた幹部たちが呆然と彼を見つめていた。隣にいた山田宏は状況を察し、すぐに全員に告げた「解散!」

幹部たちは察して退出した。

山田宏は藤原和也を見た「何があったんですか?」

藤原和也は山田宏を見ることなく、表情を引き締めたまま電話に耳を傾けていた。向...

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