第13章

林原深川の顔から、貼りつけたような笑みがわずかに引きつった。

彼はこの副社長の気性をよく知っている。さらにいえば、いま執務室にいる上司の機嫌も。なにより厄介なのは――どちらも敵に回せない、という現実だった。

それ以上は強く出ない。だが、扉を開けることもしない。

彼はただ、すっと身体を半歩ずらしただけ。

リリはその意図を即座に読み取った。秘書として「自分の手で開ける」わけにはいかない。けれど、副社長が力ずくで入るのを止める権限もない。

さすが年季の入った職場のプロだ。林原深川の責任転がしは、実に鮮やかだった。

その結果――

松村礼嗣は、勢いよく踏み込んできた二人を、驚いたように見...

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