第29章

その夜――L市に新しくオープンした高級レストラン。

平原綾香はウェイターに案内され、店内へ足を踏み入れた。窓際の席には、すでに上村圭が待っている。

「ごめんなさい、遅くなって」

綾香が腰を下ろし、クラッチバッグを脇へ置く。

「俺も今来たところだよ」

上村圭は微笑み、赤ワインを半分ほど注いでくれた。

「ここのシェフ、腕がいいんだ。綾香に食べてほしくて」

綾香はさりげなく店内を見回す。豪奢なのに下品さはなく、音楽が空気に溶けて、静かで居心地がいい。

「……たしかに、すごくいい雰囲気」

思わず感心すると、上村圭が姿勢を正して言った。

「綾香。前に話した海外の医療新技術、進展があ...

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