第36章

慈善ガラの夜は、予定どおりやってきた。平原綾香は――やはり、足を運ぶことにした。

クローゼットルームの姿見の前に立ち、鏡の中の自分を見つめる。

六年。

あの夜の細部は、指先の触れ方も、息の乱れも、記憶の奥に焼きついて離れない。

それでも行くのは、いつまでもそこに囚われたくないからだ。真正面から踏み越えなければ、悪夢は一生ついてくる。そう思った。

松村家の邸宅は今夜、白昼のように煌々と灯り、庭の噴水まで宝石みたいにきらめいている。

松村グループの集客力はさすがだった。L市の名士や財界人が、まるで招集されたかのように顔を揃えている。

綾香はシャンパンを片手に、比較的静かな隅の席を選...

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