第36章

乙村彩羽は二日ほど休みをもらっていた。

 最初にここまで連れてきたのは石塚勝矢だったが、それきり彼は姿を見せなかった。

 三日目。体調もだいぶ戻り、じっとしているのにも限界を感じた彩羽は、部屋を片づけて下へ降りた。

 田村が使用人たちに指示を出し、花瓶を運ばせているところだった。

 彼女に気づくと、手を止めるでもなく一言だけ声をかける。

 「体の具合はもういいの?」

 乙村彩羽はうなずいた。

 「だいぶよくなりました。何か、お手伝いできることはありますか」

 田村はあたりを見回し、それから言った。

 「じゃあ、厨房に入ってちょうだい」

 彩羽は素直に返事をして、厨房へ向か...

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