第37章

乙村彩羽が廊下を半分ほど進んだところで、メイドのひとりに呼び止められた。

「どこ行くの? 木宮さんがいらしてるの見てないの? みんなバタバタしてるのに、あんたひとりだけサボり?」

あの日、田村と一緒になって乙村彩羽の素性を根掘り葉掘り探ってきた女だ。

乙村彩羽は覚えている。村上――たしか知り合いの紹介で入ってきたらしく、石塚家に来て一年余り。ほかのメイドたちからは、露骨ではないにせよ、どこか距離を置かれている。

「田村さんに、今日は厨房を手伝うよう言われてました。もう終わりました」

このタイミングで余計な火種は抱えたくない。乙村彩羽は最低限だけ説明する。

「木宮さんと石塚若様がお...

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